せんこ
会社員。国際フライングディスク連盟委員。ライフコーチ。理系学生、アルティメットの競技者、セキュリティの研究者として、男性が大半を占める環境に順応して過ごしてきたが、出産を契機に女性のビジネスキャリア、アスリートキャリアについて活動を始める。ビジネススクールでコーチングを受けた体験から、自身も誰かの役に立ちたいとコーチングを学ぶ。一人ひとりの「二度と来ない今を生きる」を応援する。

コーチングの旅の始まり

——これまでの経歴について簡単にお聞かせいただけますか?

現在、名刺を3枚持って活動しています。1つ目は、IT企業の会社員として、サイバーセキュリティのビジネス企画チームでマネージャーをしています。大学院まで暗号理論の研究をやっていて、研究職として今の会社に就職しました。

2つ目は、フライングディスクスポーツの普及活動や競技者の支援をしています。大学の時からフライングディスクを使ったチームスポーツである「アルティメット」をやっていて、15年以上選手として活動していました。現在はフライングディスクの日本協会や世界連盟の委員をしています。

そして3つ目は、ライフコーチ・パーソナルコーチとして個人向けにセッションを提供しています。

——せんこさんがコーチングと出会ったきっかけや、その時の何か印象的なエピソードはありますか?

はっきりとコーチングを意識するようになったのは、2020年にビジネススクールにオンラインで通っていた時のことです。コーチングやメンタリングの講義で、実際にセッションを受ける機会がありました。

その時、自分が管理職になる可能性があるという話をしたんです。はじめは「管理職を本当に目指したいのか、自分が何をしたいのかわからないまま管理職試験が近づいてきてるんだよね」と事実を話し始め、45分間のセッションが終わる頃には、自分の中に恐れや戸惑いがあること、それにもかかわらず挑戦したいという意志があることを見つけられました。そのセッションは大きなインパクトがあり、そこから自分もコーチングができるようになって誰かの力になれたらいいなと思うようになりました。

その後、Twitterなどでコーチングについて調べてみたり、コーチングスクールの説明会に参加していく中で、THE COACH Academyのことを知りました。説明会に参加した時に、「ここしかない」と思い、すぐに申し込みました。それが私のコーチングの旅の始まりです。

手放すことと無邪気さへの回帰

——THE COACH Academyでの旅を振り返って、何か変化はありましたか?

インテグレーション・コースの5ヶ月間にだんだんと変化が起きました。それは、「手に入れたものをどんどん手放していく」という感覚です。手に入れたものを捨てているわけじゃないんですよ。手に入れて、自分の中で何かが起きて、様々なものを最後は手放しているんです。それが今も続いています。

振り返ると、私のTHE COACH Academyでの旅路では常に誰かが一緒にいたような気がします。自分と一緒に学んでいる同期やリードの方々、そしてLoungeで見かける人々。何か壁に当たったり迷ったり不安を抱えたりも、全員が"あなたなら大丈夫"と言ってくれます。それに、メンターコーチングをしてもらう時に、リードが強くて大事なアドバイスを投げてくれるのが本当に嬉しい。それらすべてが、私自身が握りしめていたものを見つめて手放すプロセスで大きな支えになっていると感じます。

——手放していった先に何が残ると感じますか?

無邪気な感じですね。人間の一生は、何かを置いていく行為が続き、最終的には生まれた時の無邪気さに戻るような感じがあります。しかし、それは完全に子ども時代に戻るというより、来た道を逆にたどる感じ。らせん階段をのぼって同じ場所に来ているような。でも見ている景色や感じる風は全然違います。手放すことで戻っていくと同時に、自分の中に残るものを獲得していく。そうすることで、自分が本当に欲しいと思うものだけに絞られていきます。

“もどかしさ”から新たな一歩へ

——コース中で大変だったこと、また、それを乗り越えた方法について教えていただけますか?

大変というのが、苦しいとか辛いという意味に取るなら、そういうのはあまりありませんでした。ただ、インテグレーション・コース中、「もどかしい」という感情はありましたね。

そのもどかしさとは、みんなと仲良くなりたい、もっとみんなとつながりたいのに、なかなかつながれてないという感じでした。中間ピットインの時にリードに「もっとみんなと仲良くなりたいけど、なかなかつながれない感じがする」と話しました。

そんな私に対し、リードが「私たちにできることはある?」と尋ねてくれました。でも、その時、自分の中から「これは自分でやらなければ」という声が聞こえてきて、「自分で改善しよう」と決心しました。

その後、東京にいるメンバーだけでご飯に行く約束をしたんです。みんなと一緒にご飯を食べた時に、私だけではなく、みんなも実は仲良くなりたいと思っていたことを知りました。

これはコースが残り1ヶ月半というところ。もっと早くつながれていたら!とも思いましたが、その反面、今も、私たちインテグレーション・コース2期(旧プロコース15期)のメンバーは、毎月15日にオンラインで集まっていて、その時にみんなで話したり、情報交換をしています。それは、もどかしかった時期を乗り越えて、今はじっくりと人間関係を築くことができているからこそ、可能なんだと思います。そういう意味では、もどかしい思いをしたことは悪いことではなかったのかもしれません。むしろ、そのおかげで新たな一歩を踏み出すことができたと感じています。

——コース体験を経て、仕事や実生活にどのような影響がありましたか?

ぱっと思いつくのは、私が自身の基本姿勢として持っているコーチとしてのスタンスですね。これは自分のチームメンバーと1on1で話すときにも役立っています。もちろん、仕事におけるチームメンバーとの関わりってコーチングだけが正解じゃないと思うので、必要であればアドバイスやメンタリングをします。

でも、自分がコーチとしての関わり方を知っていることで、一緒にいる限られた時間の中で、チームメンバーに特別な体験を提供していると思っています。コーチ的なスタンスは、関わり方や対話の仕方にも当然影響しています。私は「この人は大丈夫」と信じながら人の話を聴きます。人に話を聴かれる、人に話をするということのインパクトを体感的に知っていて実践しているからこそ、職場でも、人の話を聴く、または聴かれることに対しての感度が上がっています。

それにより、話を聴いていない人にすぐ気づくし、その隙間を埋めていくような動きを取れるようになってきました。それが仕事の中での大きな変化かもしれません。以前は何か居心地が悪いとか、ムズムズするなと感じることがあったんですけど、その感覚を研ぎ澄まして対応するようになりました。

——ご家庭や友人との関わりの中など、プライベートな面ではどうですか?

自分のコーチング技術を、小学4年生の子どもに対してよく活用しますね。例えば、家に帰ってきて顔色が硬いときとか、何かあったなと思える時がありますよね。そんな時には、「今日、どうしたの? 何かあった?」と投げかけてみます。

でも、すぐに問い詰めるようなことはしないんですよ。何か違うなと感じた時には、「今日は様子が何か違うね」といつも見てるからこそ気づく変化を素直に伝えてみて、様子を見守ります。それで、子どもが友達と喧嘩をしたと話し始めたら、じっくりとその話を聴くんです。

そのうちに、本人が本当はどうしたかったのか、何が伝わらなくて悲しかったのかを言葉にしていき、その言葉に自ら納得して「明日はこう行動しよう」と力を取り戻す姿を見ることができます。子どもが自らどうしたいかを気づく力があると信じてただ話を聴くと、本当にそのようになるのです。人に本来備わっている力は本当に素晴らしいな、と感じますね。

あなたはあなたのままでいい。私はあなたを信じている

——せんこさんの今後のやりたいこと、目指している姿を教えていただけますか?

最初に名刺を3枚持っているとお話したようにそのどれもが互いに違う役割を果たしていますが、共通している点もあります。

それは、私は誰かを励ます存在でありたいという願いです。誰かが混乱したり不安になったり、自分を信じられなくなったときでも、「あなたは大丈夫、私はあなたを信じている」と伝えたい。仕事でもスポーツでも、私の周りの人々に対して常にそう思っています。

マネージャーとして、母親として、妻として、コーチとして、そしてフライングディスクスポーツを支える者として、私の人々との関わり方には一貫性があると思っています。それを実践する一つの方法として、コーチとしてのスキルを磨き、セッションを提供し、また自分自身もコーチングを受けることを大切にしています。コーチングを通じて自己探求を続けることが、自分が目指している人と人との関わり方を実現するための大切な要素だと感じています。

——せんこさんにとって、コーチングやコーチングマインドというのは一体どんなものなんですか?

私にとってはある種の「立つ場所」のようなものですね。それは、どこに行っても常にその上に立っていられるもの。イメージは動く野球ベースです。私がどこにいても、何をしていても、私はいつもコーチングマインドの上に立っているということです。

——最後に本記事を読んでいただいた方にメッセージをお願いします。

「自分は自分のままでいい」という言葉を送りたいです。生きていると、誰かや何かのために無理して形を変えて、はまりにいくことを求められていると感じるかもしれません。それも立派な芸当ですが、そうでなくてもいい。自分が一番気持ちよくて、心地よくて、楽ちんな状態でも大丈夫。自分らしさを探しに行くことも大切です。

コーチングを学んだり、受けてみたりすることは、その探究を助けてくれるでしょう。そして、コーチングを学び始めたら、予想もしていなかったようなことが起こるかもしれません。それが新たな経験となり、さらなる成長につながるでしょう。

そのような経験をたくさんの人がコーチングを通じてできたら、それはとても面白いことだと思います。